CASE STUDIES

300社の現場で、
実際に何が変わったのか。

「業績を伸ばしたい。けれど、組織が止まっている」——そんなフェーズで、どんな打ち手を取り、何が起きたのか。書籍『小さな会社No.2の選び方・育て方』第7章「No.2リアルストーリー」から、8つの実話をご紹介します。うまくいった話だけではありません。

CASE 01
訪問鍼灸マッサージ業 3店舗・社員10名 支援1年

社長が「未来の仕事」に戻れた1年

任せ方を、気合から設計へ
所長3店舗に新設
3制度評価・報酬・教育を連動

課題

採用・教育・営業・トラブル対応・店舗運営まで、判断も実行も社長ひとりに集中。会社を良くしたい気持ちはあるのに、未来のための仕事をする時間が取れない。典型的な社長依存型でした。

打ち手

最初にやったのは、仕事を取り上げることではありませんでした。任せられない原因は「人の問題」ではなく「任せる基準が言語化されていない構造」にある。そう考えて、まず経営理念・ミッション・ビジョン・バリュー・行動指針を策定しました。
次に3店舗それぞれに「所長」を新設。役割・責任範囲・判断してよい領域・報告が必要な領域を役職定義として明文化します。さらに評価・報酬・教育の3制度を連動させ、行動指針に沿った行動が評価され、成長が報酬に反映され、教育がそれを支える形に整えました。

成果

  • 所長が「何をすれば評価されるのか」を理解し、責任感が向上
  • 制度が整ったことで採用面接での納得感が上がり、優秀な人材を採用できるように
  • 社長はサービス品質の向上・新規展開・地域連携に時間を使える状態へ
この事例が示すこと 「任せる」を気合から設計に変える。それが権限移譲の出発点です。
CASE 02
美容・エステ業 支援2年

「額縁の経営理念」を、現場の行動評価におろす

社長の暗黙知を、形式知に変えた2年
1.2倍売上(前年比)
半減優秀層の離職率

課題

理念を体現でき、スキルが高く、売上をつくれる社員ほど辞めていく。残るのは経験の浅い社員。店の実力が積み上がらず、採用と育成を繰り返して疲弊していました。原因は、評価と報酬の連動が社長の頭の中にしかなかったこと。優秀な人ほど「ここにいても将来が見えない」と感じて、静かに去っていきます。

打ち手

1年目は教育の仕組み化。マニュアルと研修を刷新し、施術スキルと営業トークを平準化しました。担当は社長ではなく、社内のNo.3を任命しています。
2年目は本命の評価・報酬・教育制度の見直し。売上や指名数だけでなく、理念を体現した行動が評価され、報酬に反映され、教育と連動する設計にしました。

成果

  • 施術スキル・営業トークの平準化に成功し、売上は前年比1.2倍
  • 店舗間のバラツキが縮小
  • 優秀な社員の離職率が前年比で半減
  • 最終的に外部No.2は「卒業」し、No.3がNo.2へ昇格
この事例が示すこと 理念は掲げるだけでは動きません。行動に翻訳し、評価に落とし、教育で育て、報酬で報いる。社長の暗黙知が形式知になったとき、理念は初めて現場の言葉になります。
CASE 03
飲食業(居酒屋) 支援1年

離職率 40% → 10%。1on1がつくった「声が届く現場」

たった30分の対話が、組織を変える起点に
40%→10%離職率(1年)
紹介アルバイトからの応募が発生

課題

アルバイトの離職率が40%で高止まり。辞める理由を聞いても「特にないです」「忙しかったので」と曖昧で、社長もNo.2も原因が掴めない。気合や待遇の問題ではなさそうだが、打ち手が見えない状態でした。

打ち手

立てた仮説は「離職の原因は根性不足ではなく、店長・正社員とアルバイトのコミュニケーションが噛み合っていない構造にある」。
そこで最初の3ヶ月、No.2が店長・正社員とアルバイト全員に月30分の1on1を実施しました。ルールはひとつ、「申し送りや指導の時間にしない」こと。飲み物やお茶菓子を用意し、安全に本音を出せる空気を整えます。
見えてきたのは、業務効率が優先されるあまりアルバイトが「言っても無駄」と学習していた事実。その後1on1を店長・正社員へ移譲し、No.2は店長・正社員の1on1を担当。「アルバイトの声 → 店長・正社員 → No.2 → 仕組みの改善」というループをつくりました。あわせて毎月の全スタッフ研修を新設し、「宣言 → 1ヶ月後に上長が評価 → インセンティブ・昇格」と教育・評価・報酬を連動させています。

成果

  • 離職率 40% → 10%(1年)
  • アルバイトから「友達が一緒に働きたいと言っています」という紹介が発生
この事例が示すこと 離職は待遇だけでは止まりません。辞めるのは、孤独だから。声が届かないから。成長の道筋が見えないから。たった30分の対話が、組織を変える起点になります。
CASE 04
障害福祉業 支援2年

売上V字回復と賃上げ。そして残った「痛み」の2年

評価と教育だけでは、人は定着しない
V字回復売上
賃上げ社長が決断

課題

「地域に寄り添う」という強い理念を持つ、真面目な会社。しかしある時期、若い職員が複数名同時に退職しました。社長は「もう二度と同じことを起こしたくない」と強く悩んでいました。

打ち手

まず評価制度と教育制度を策定。報酬制度は運用が慣れる2年目以降に検討する方針でスタートしました。半年で制度を形にし、半年で試し運用、2年目に本格運用へ——設計としては王道です。

成果

  • 評価軸が見え、若手が「何を頑張ればよいか」を理解
  • 育成が属人化せず、目標設定や業務改善が現場から自然に発生
  • 若手の離職が落ち着き、売上もV字回復

ところが2年目の終わり、再び複数名から退職の申し出がありました。全員面談で返ってきた声は、驚くほど同じでした。「給料が安すぎて将来が不安です」。調べると、近隣同業より月数万円低い水準でした。
提言の結果、社長はこう決断します。
「若手職員の給料を上げることにした。ただ、原資が乏しいので、来期の契約は更新しない。賃上げの原資にする」

この事例が示すこと 評価と教育だけでは、人は定着しません。生活が守られて初めて、理念は力になります。そして外部No.2の本当のゴールは契約継続ではなく、社長が自分の足で立ち、仕組みを回し、人に報いる決断ができる状態をつくることです。
CASE 05
製造業(町工場) 社員10名 支援1年

社歌プロジェクトで、全国3位と若手2名の採用

理念を歌にした瞬間、会社が「語れる組織」に
全国3位社歌コンテスト+審査員特別賞
2名20代の若手を採用

課題

「地域を通じて絆と笑顔をつくる」という理念はあるのに、経営計画書の中に留まり、現場の言葉と行動になっていない。採用も定着も苦しい状況でした。

打ち手

社長からの相談は「理念を歌詞とメロディーに乗せた社歌を作りたい」。目標は全国社歌コンテストでの優勝でした。
設計で効いたのは、社長でも工場長(No.2)でもなく、若手のNo.3をプロジェクトリーダーに任命したことです。幹部候補の若手女性社員との2名体制。
進め方は、①全社員アンケートで「会社らしさ」の欠片を集める → ②歌詞案を作成しチームと磨く → ③3つの候補曲から全社員アンケートで選ぶ → ④工場2階でレコーディング → ⑤動画撮影(夏祭りで地域の子どもたちと踊るシーンも)。

成果

  • インターネット投票で全国12位以内に入り決勝進出、全体第3位+審査員特別賞をダブル受賞
  • 大会後、20代半ばの若手社員2名を採用。2人とも入社前にSNS・HPで社歌動画を見て「面白そうな会社だと思った」
  • 会議が「聞く場」から「つくる場」へ変化
この事例が示すこと 理念浸透は、説明では起きません。感情が動く共同体験の中で「口にできる言葉」になったとき、初めて根を張ります。
CASE 06
通信系販売員派遣業 正社員約30名 支援1年

社内検定で、採用・定着・コンプライアンスを同時に立て直す

「頑張る人が報われる」を、形にする
ゼロへ大きなコンプライアンス違反
3万円全検定合格で毎月の手当

課題

社員が全国の派遣先に散らばり、教育も文化も「やったりやらなかったり」。社内No.2(人事部長)が最も危険視していたのは、離職や採用以前に「このままだと派遣先でコンプライアンス違反が起こり得る」という会社の生存リスクでした。

打ち手

提案したのは研修の追加ではなく、逆に「やることを減らし、かならずやる形にする」ことでした。
基礎教育を映像化し、義務教育としての「入社時導入研修」に。全エリア必ず視聴、受講レポートを新入社員→マネージャー→本部へ提出。
さらに役職ごとの社内研修と理解度テストを設計し、「検定制度」と命名。検定は5つ、全部合格で毎月合計3万円の手当がつく仕組みにしました。

成果

  • 導入研修の映像化後、大きなコンプライアンス違反がなくなった
  • 採用面接で「資格制度を詳しく教えてください」という声が増え、教育制度が採用の武器に
  • 検定合格者は辞めていない(2つ合格で手当9,000円。転職すれば消える「積み上げたもの」が退職抑止に)
  • 頑張らない社員にも「検定を受けていないから給料が上がらない」と理由を明確に伝えられるように
  • 社長が年2回「今回は何人が参加して、結果はどうだった?」と聞くようになり、教育が経営テーマへ
この事例が示すこと 現場が分散する会社ほど、教育を「良い内容」にする前に「かならず回る仕組み」にする必要があります。制度は、作るより守るほうが難しい。
CASE 07
介護福祉施設 支援3年

施設長交代。現場の弟が「経営の背中」を背負うまでの3年

支える人から、引き受ける人へ
3年育成→制度→承継
卒業自社運用フェーズへ移行

課題

出発点は制度づくりではなく、施設長からの一言でした。「若手のリーダーを育成したいので研修をお願いしたい」。若手が育たず中堅が疲弊し、管理職が燃え尽き、離職が起きてさらに育成が難しくなる——その負の循環を止めたい、という相談です。

打ち手

1年目:階層別研修を体系的に実施。「受けて終わり」にせず、受講レポート+行動目標の設定+上司のフィードバックを循環させました。
2年目:研修の内製化と教育制度の構築。さらに評価制度・報酬制度へ踏み込み、構築→トライアル→見直しを繰り返します。
3年目:施設長(兄)の異動が決定し、後任は副施設長(弟)に。介護技術・接遇・清掃整頓の状態を定期点検し評価する「現場品質の見える化」の仕組みづくりへ。

成果

  • 共通言語が浸透し、部署間のやり取りがスムーズに。「話が通じる」感覚が広がる
  • 発言の少なかった副施設長が「この取り組みは私が中心になってマネージャーを巻き込み進めます」と宣言
  • 施設長への相談が減り、副施設長に相談が集まるように。組織の重心が静かに移動
  • 3年目の契約満了1ヶ月前に制度が完成。「我々での運用フェーズに移行します」という理想的な卒業
この事例が示すこと No.2の仕事は「現場が分かる」だけでは足りません。「人の心が分かる」まで踏み込んで、初めて組織の中核になれます。
CASE 08
SES企業(IT) 社員22名 → 43名 支援3年

27歳の女性リーダーが「感情の橋渡し役」になり、3年で売上2倍

声が届く組織をつくったら、社長が前を向いた
2倍社員数・売上(3年)
20%→10%離職率

課題

社員は顧客先に常駐し、社内にはほとんどいない。日々の頑張りも悩みも派遣元には見えず、一度「感情の断線」が起きると静かに辞めていく。退職理由を聞いても表面的な言葉しか出てきません。当時のNo.2いわく「辞める理由はたくさんあったが、辞めない理由はなかった」。

打ち手

リーダーに登用されたのは27歳の女性社員。現場には親ほど年上の社員も多い中、彼女が最初にやったのは「正しさ」を押し付けることではなく、声が上がる構造をつくることでした。
リーダー制度:3人のリーダーを任命し、社員を3グループに。「誰に聞けばいいか分からない」が解消。
評価項目に「顧客指向性」を置き、会社が何を大切にするかを見える化。
対話の定例化:人事評価面談(目標設定/中間/フィードバック)を定例化。チャットや面談で日々の会話量を増やし、毎月の帰社会も設計しました。

成果

  • 離職率 約20% → 約10%
  • 3年で社員数2倍、売上も約2倍(社員22名・売上1.8億 → 43名・売上3.5億)
  • 社長が現場の割り込み対応から解放され、新規事業に集中。新規事業は3年で10店舗・社員30名・売上3億円の第二の柱に成長
  • 4年目に彼女はマネージャーへ昇進。参謀型の部長と横並びの「機能分散型No.2」体制が完成
この事例が示すこと SES企業の成長を止めるのは技術力不足ではなく、「本音が上がらない」「頑張りが見えない」「苦しい時に相談できない」という構造です。聴く力は、その構造を変えます。
NO.2 LETTER

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ここに載せた8つの事例は、300社のごく一部です。
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8つの事例の全文は、書籍でお読みいただけます。

『小さな会社No.2の選び方・育て方』榊原英晃 著/同友館
2026年10月13日 全国書店発売/220ページ・1,980円(税込)

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※ 各事例は、書籍『小さな会社No.2の選び方・育て方』(榊原英晃 著/同友館)第7章「No.2リアルストーリー」をもとに、Web用に再構成したものです。
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